事務所ブログ

2014.07.05更新

将来的に日本においてカジノ営業が開始されることはほぼ確実な情勢ですが、日本においてはどれくらいの売上規模になるのでしょうか。
法律家である私には、その予測をすることはできません。
しかし、そもそも、世界のカジノ業界全体の売上はどのようになっているのでしょうか。
世界的なコンサルティング会社であるプライスウォーターハウスクーパース(PricewaterhouseCoopers PwC)が2011(平成23)年12月に公表した"Global Gaming Outlook The casino and online gaming market to 2015({「2015年までのカジノ&オンラインカジノ市場」)"では、2010(平成22)年の全世界のカジノ市場の総売上は1175億7千9百万USドル(以下、ドルの表記は全てUSドル)ですが、2012(平成24)年には1466億8千万ドルになり、更に2015(平成27)年には1827億7300万ドル(対2010年比9.2%増)になるものと予測しています。
このうち、各地域の2011年の売上及び2015年の売上予測は以下のとおりです。
なお、カジノの売上とは、カジノ業者の取り分であるハウスエッジ(house edge)の累計額であり、これは、日本のパチンコホール業界における景品提供後(要するに換金額を除いた)総粗利に相当します。

           2010年        2015年

アメリカ合衆国  574億8千8百万ドル   733億2千万ドル

欧州、中東及び
アフリカ 163億7百万ドル     183億4千3百万ドル
 
アジア太平洋地域 342億8千万ドル     792億6千6百万ドル

ラテンアメリカ   38億9千6百万ドル    56億1千4百万ドル

カナダ       57億4百万ドル      62億3千万ドル

合計       1175億7千9百万ドル 1466億8千万ドル   

いささか古い資料ですがダイコク電機㈱が平成25(2013)年7月3日に公刊した「DK‐SIS白書2012」では、平成24(2012)年のホール業界の総売上は24.8兆円で対前年比0.2兆円増、総粗利は過去最低で前年比0.4兆円減の3.78兆円となったとしています。
ホール業界の粗利とは、貸玉料金の累計額である総売上から賞品として提供された客への還元分すなわち換金分のコストを差し引いた残額です。


この日本のホール業界の総粗利は、「DK‐SIS白書2012」のデータによれば大まかに1ドル100円というレートで計算すると378億ドルとなり、世界のカジノ業界の2015年における総売上予予測の21%、アジア太平洋地域のカジノ業界の同じく売上予測の48%に匹敵する巨大な市場規模であるということになります。
 ということは、来るべきカジノの合法化により、日本において営業を開始するカジノ業者の営業戦略は、世界中から富裕層を呼び込むことに加え、現に換金目的でホールに通うパチンコファンを営業の下支えをしてくれる顧客層として取り込むことになるのは寧ろ必然でしょう。

 ところで、カジノ業者がパチンコファンを自らの客に取り込もうという営業戦略の成否を占うに当たり、カジノ業者とホール業者との競争力を比較することは可能でしょうか。
 まず、カジノが金銭を直接賭ける賭博であり、ホールが賞品としての物品が提供されるだけというのであれば、それだけでカジノに相当なアドバンテージがあることは明らかです。
次に、両者とも「勝負ごと」=ゲームを提供するという共通点に着目すると、客の目線からは、どちらが勝ち易いのか、ホールに引き寄せていえば、「出玉感」の良し悪しが競争力の差異になって現れる面があると思合われます。
異論はあるとは思いますが、この「出玉感」の良し悪しが、業者側の還元率によって客観的に裏付けられるとすれば、還元率を高めれば必然的に減少して行くという関係にある粗利率の少ない方が、競争力があるということになります。
ここで、カジノ業者のハウスエッジはテーブルゲームでは、バカラが1.19%から1.34%、ヨーロピアンルーレットが2.7%、アメリカンルーレットが5.26%で、マシンゲーム=スロット等では、ミニマム1ドルでは例えば5%、同25セントでは例えば20%に設定されるとのことです(大川潤・佐伯英隆「カジノの文化史」26~31頁)。
これに対して、日本のホール業界の粗利率は、「DK‐SIS白書2012」のデータから逆算すると貸玉料金の約15%です。
パチンコはマシンゲームですが、ミニマム25セントのスロットよりは粗利率が低く客への還元率が高いのですが、ミニマム1ドルのスロットよりは粗利率が3倍も高く、その分還元率は低くなります。
しかるに、パチンコファンのうち、ミニマム25セントレベルのスロット等のマシンゲームには満足しない層にとっては、ホールは還元率の点で完全にカジノに水をあけられており、その限りで競争力がないということになります。

投稿者: 三堀法律事務所