事務所ブログ

2020.06.15更新

1 働き方改革関連法とは

 いささか旧聞に属する話題となりますが,成31(2019)年4月1日以降,働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律。以下,単に「法」ともいいます)が順次施行されております。

 武漢コロナウイルスの感染症対策として,在宅勤務等が広く導入されたのを契機に,今後,在宅勤務のウエイトが高まって行くものと思われます。しかし,在宅勤務の広まりが,少子高齢化による人手不足・働き手不足という問題を抜本的に解決するものではないことは明らかです。

 そして,少子高齢化に起因する我が国の「生産年齢人口の減少」と「労働者のニーズの多様化」に対応するために,技術革新等による生産性向上と共に,各労働者の個別事情に応じた柔軟な働き方を選択できるようにするべく制定された法律が,この働き方改革関連法なのです。ところで,そもそも「働き方改革」というのは,働き手の減少という現実に対し,一部の労働者の働き過ぎを防止すると同時に正規雇用になじまない人材にも就労のチャンスを広めることとであり,更に,このことを通じて生産性の向上と所得の合理的な分配を促し,経済を活性化させようという発想に基づくものです。

 この働き方改革を実現するため,法は,第1の柱として労働時間法制の見直しを,第2の柱として雇用形態に関わらない公正な待遇の確保を掲げております。

2 労働時間法制の見直し

 働き方改革関連法の第1の柱である労働時間法制の見直しは,働き過ぎを防ぐことで労働者の健康を守り,多様な「ワーク・ライフ・バランス」の実現を図るというものです。

 その概要は,以下のとおりとなります。

① 時間外労働の上限規制(法1条,労働基準法32条の3・36条)
 月45時間,年360時間を原則とする(1日2時間程度の残業)。
 臨時的な特別事情があって労使間で合意する場合でも,年720時間以内,複数月平均80時間以内(休日労働を含む)(1日4時間程
 度の残業),月100時間未満を上限とする。この場合も,原則である月45時間を超えられるのは年間6か月までとなる。

② 勤務間インターバル制度の普及促進(法6条,労働時間等の設定の改善に関する特別措置法2条2項)

③ 年5日の有給休暇取得の企業への義務付け(法1条,労基法39条7項)
 労働者から使用者への取得希望の申し出から,使用者からの指定へと変更される。

④ 月60時間超の時間外労働の割増賃金率の50%への引き上げ(労基法37条1項)。
 月60時間超の時間外労働の割増賃金率は大企業は50%であったが,中小企業(ホール業等のサービス業の場合は,資本金5千万円以下
 又は常時雇用する労働者数100人以下)は25%に抑えられていたところ,中小企業についても50%の割増賃金率が適用されることに
 なる。

⑤ 労働時間の客観的な把握の義務付け(法4条,労働安全衛生法66条の8の3)

⑥ フレックスタイム制の拡充(法1条,労基法32条の3)
 労働時間の清算期間を1か月から3か月に変更し,より柔軟な働き方が可能になる。

⑦ 高度プロフェッショナル制度の新設(法1条・4条,労基法41条の2・労安法66条8の4等)
 高度の専門的知識を有し,職務の範囲が明確で,一定の高額の収入要件(年収1075万円以上)を満たす労働者を対象に,労使委員会
 の決議及び労働者本人の同意を前提として,労基法所定の労働時間,休憩,休日及び時間外割増賃金の規定を適用しないとする制度であ
 る。

⑧ 産業医・産業保健機能の強化(法4条,労働安全衛生法13条~13条の3,66条の5,66条の8の2~66の9等)

 これらのうち,⑦の高度専門職制度は,対象職種が金融商品の開発業務,ディーリング・アナリスト・コンサルタントの業務,研究開発業務といった特殊な業態・業務に限定されます。また,⑧の産業医の選任は,常時50名以上の労働者を雇用する「事業場」から義務付けられるものですから(労安法13条),相当数の中小企業には妥当しないでしょう。

 しかし,その他については,中小零細企業を含めてそのまま妥当するものとなります。例えば,労基法の定める1日8時間,週40時間の法定労働時間(同法32条1項)を超える時間外労働をさせるには,労使間で同法36条1項に基づく「三六(さんろく)協定」を締結して労働基準監督署に届け出なければなりませんが,その場合でも,月45時間,年360時間,臨時的な特別な事情があって労使間で合意する場合でも年720時間以内,複数月平均80時間以内,月100時間未満が上限となります。この上限を超える時間外労働は絶対的に禁止となりますから,現状でこの基準を超えている企業では,業務の効率化や一部の労働者へのしわ寄せがないかの見直しによる時間外労働の削減に力を入れなければなりません。

 また,月60時間を超えた時間外労働に対する割増賃金率が中小企業も50%となる点は。影響が大きいでしょう。

3 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

 働き方改革関連法の第2の柱である雇用形態に関わらない公正な待遇の確保は,同一企業内における正規雇用と非正規雇用の間にある不合理な待遇の差をなくし,どのような雇用形態を選択しても「納得」できるようにするというるものです。

その概要は,以下のとおりとなります。

① パートタイム労働者・有期雇用労働者の不合理な待遇差をなくすための規定の整備(法7条・短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管
 理の改善等に関する法律8条,9条)
 均衡待遇規定(職務内容,職務・配置の変更範囲の相違を考慮して不合理な待遇差を禁止)及び均等待遇規定(職務内容,職務・配置の
 変更範囲が同じ場合は差別的取扱い禁止)を整備する。

② 派遣労働者と派遣先労働者の均等待遇,均衡待遇の配慮義務(法5条,労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に
 関する法律30条の3~30条の6)

 例えば,正規雇用もパート・有期雇用も同一の職務内容で同一の責任を負っているのに賃金に差異があったりする場合や,正規雇用では
定期に定額の賞与が支給されるのにパート・有期雇用には賞与が支給されないような場合には,不合理で違法な待遇格差がある,ということになります。このような待遇格差は,違法とされるのです。

投稿者: 三堀法律事務所