事務所ブログ

2013.02.01更新

 私(三堀)が弁護士登録した昭和の終わりの時期から、平成の初めにかけての数年間は、バブル経済が勃興した時期です。
 不動産、株、ゴルフ会員権、美術品、書画骨董・・・およそ投資の対象となるものはいずれも騰貴的な値上がりをして、資産を持つ 者と持たざる者の格差が生じたのですが、このころは、また、実感として、企業、特に余り大きくない企業の内紛が多発した時期でもあります。
 このような「内紛」とは、例えば経営方針を巡る対立や単なる仲間割れではなく、企業の支配権を獲得しようとする争いであり、要するに、誰かが企業を我が物にしようとすることによる争いです。
 なぜ、この時期、企業の内紛が多く発生したのか。それは、バブル景気が、多くの中堅・小規模の企業を支配すること自体を「おいしい」ものにしていたからです。
 当時、「含み益」という言葉が盛んに使われました。時価会計基準の下ではありえないのですが、本業は振るわなくても、大昔に企業が購入した固定資産や投資有価証券の時価が、簿価の数百倍、数千倍に膨らんでいるということがあったのです。「含み益」のある企業の支配権を獲得することは、莫大な資産を独占できることを意味したのです。
 ところで、企業の内紛といっても、最終的には株式会社の支配権は持ち株比率の大きい側に収斂します。しかし、内紛の当事者の持ち株数が拮抗していたり、少数派の株主が企業支配の野心を持っていたり、更には、数次の相続や名義株主の存在のために株主がどうなっているか分からなくなったりしたケースもあります。中小企業では、しっかりした株主名簿がない場合が普通だったのです。
 こうなると、企業支配の野心を持った者は、適法な手続きを経ずに自分や身内に第三者割当増資をするという方法で持ち株割合を飛躍的に増加させるという荒業を使ったりします。そして、このような荒業の影に必ず弁護士が関与していました。
 現在では公開会社以外で新株を発行するには、株主総会の特別多数決による決議が必要ですが(会社法199条2項、309条2項5号)、かつては、特に有利な発行価額(要するに安く)で発行する場合以外、株主への通知又は公告を要するものの、取締役会の決議だけで第三者割当増資ができてしまいましたから、実際には破格の安値で新株を発行するのにもかかわらず、「特に有利な発行価額ではない、適正な時価による発行である」と強弁して既存株主(支配を相争う敵対株主も含みます)へは個別の「通知」ではなく、誰一人見ることはないであろう「官報」による「公告」をするという策を弄して、敵対株主の知らぬ間に自派の持ち株比率を引き上げてしまうのです。当時は、こんなあこぎなやり方ができる弁護士が有能との評価を得る傾向もありました。まだ、「コンプライアンス」などという言葉は人口に膾炙していなかったのです。
 不況にあえぎ、後継も育たないという昨今の中小企業の経営者の目からは、自社の支配を巡って内紛が起きるという事態を想像できないかもしれませんが、若い弁護士の目からからすると、企業の支配を目論む株主側についた弁護士が、手続的には違法な第三者割当増資に積極的に関与するということ自体が驚きだと思います。特に、会社法が制定・施行されて久しい現在では、これらの行為は、単に手続的な違法となるのみならず、敵対株主を含む個々の株主の権利を侵害する不法行為となりますから、関与した弁護士は懲戒処分間違いなしです。
 ちょっと昔の弁護士は、イケイケドンドンで威勢が良い人が多かったのかもしれませんが、 まさに隔世の感があります。

投稿者: 三堀法律事務所

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