依頼者様の声

2020.06.04更新

 令和5(2023)年10月1日から、消費税の「仕入税額控除制度」に「適格請求書等保存方式」すなわちインボイス制度が導入されることになりました。

 そもそもインボイス制度とはどういう制度で、その導入がホール業界にどのような影響を与えるのでしょうか。


1 「仕入税額控除制度」とは

 「仕入税額控除制度」とは、例えば、小売店が消費税込価格1100円で仕入れた商品を税込価格1650円で販売した場合、販売時に受け取った消費税150円(売上税額)から、仕入時に支払った消費税100円(仕入税額)を差し引いた50円だけを納税すればよいという制度です。

 現在、仕入税額控除を受けるには、仕入価格がわかる請求書等を証拠として保存するだけでよいとする「請求書等保存方式」がとられております。ここにいう「請求書等」は、仕入の際の適用税率や税額が記入されていることまでは要求されていない点で(消費税法30条8項)、後述の「適格請求書等」すなわちインボイスと異なります。

2 軽減税率導入に伴う問題

 仕入税額の算定は消費税が単一税率であれば簡単明瞭ですが、令和元(2019)年10月に消費税の税率が10%に変更された際に飲食料品や新聞には8%の軽減税率が適用されることになりました(消費税法5条)。このように複数の税率が併存する状態では、現行の「請求書等保存方式」では、仕入時に支払った消費税の税率・税額が正確に把握できないという問題が生じます。

 例えば、何れも税抜価格で、5000円の重箱弁当を売るのに、食材を1500円、重箱を500円、割りばしとお手拭きを10円、重箱を包む風呂敷を190円で仕入れた場合、食材は8%の軽減税率(税額は120円)が適用されますが、それ以外は10%の税率(税額は併せて70円)となり、販売時に預かる消費税分400円(飲食料品として8%)から仕入税額190円を控除した210円を納税することになります。このように仕入税額のどの部分が8%なのかを把握できないと控除額が正しく算定できず、また、そのことから不正が横行しかねないことになるのです。

 そこで導入されたのが、「適格請求書等保存方式」すなわちインボイス制度なのです。

3 インボイス制度とは

 インボイス制度とは、仕入税額控除の要件として「売主から買主に正確な消費税率・税額を伝える書類」がなければならないという制度です。

 正確には、買主は「適格請求書発行事業者」たる売主が発行した一定事項を記載した「適格請求書等」(インボイス)を保存していなければ仕入税額控除が受けられないというものです(改正消費税法30条7~9項)。

 「適格請求書発行事業者」とは、税務署長に届出をして登録を受けた事業者です(改正消費税法57条の2第2項)。この登録は令和3(2021)年10月1日から申請でき、登録事業者の氏名・名称や登録番号等はインターネットを通じて確認できるようになります。なお、「適格請求書発行事業者」の登録ができるのは(消費税の)課税事業者だけであり、年間売上高1000万円以下で消費税を納税していない免税事業者は登録ができません(消費税法9条1項・改正消費税法57条の2第2項)。


 「適格請求書等」(インボイス)とは、請求書の他、納品書、領収書等ですが、発行者=売主の氏名・名称及び登録番号、取引年月日、取引内容、税率毎に合計した対価及び適用税率、消費税額、書類の交付を受けた者(買主)の氏名又は名称の記載が義務付けられます(改正消費税法57条の4第1項)。消費税を払った買主が、いつ、誰から、何を、幾らで買い、その際に何パーセントの税率で幾らの消費税を払ったのかを明らかにしようというものです。

4 インボイス制度導入の影響

 インボイス制度導入により、登録済みの「適格請求書発行事業者」からの仕入れでなければ、仕入税額控除を受けられませんから、未登録の事業者、特に先述の免税事業者は取引から排除されることになります。

 しかしながら、免税事業者でも、自ら消費税を納税する課税業者となる途を選ぶことによって「適格請求書発行事業者」の登録をすることは可能です。以前より免税事業者は、消費税の支払いを受けながら納税はしないという問題があり、このような「益税」の防止という点にもインボイス制度導入の理由があるのです。

5 インボイス制度導入による三店方式への影響

 インボイス制度導入により、三店(点)方式による景品(賞品)買取システムに以下のような影響が出ることになります。

 第一に、「適格請求書発行事業者」としての登録をしていない零細な景品買取業者は淘汰される可能性があるということです。

 景品卸業者(或いは集荷業者)は、未登録の買取業者から景品を仕入れた場合、本来控除されるはずの仕入時に支払った消費税分について、二重に支払うことになりますから、このような未登録の買取業者とは取引をしなくなるからです。

 第二に、買取業者自身が仕入税額控除を受けられない可能性が生じることになります。

 買取業者の仕入先は遊技客で「適格請求書発行事業者」ではないのですから、仕入税額控除の要件となるインボイスが発行されず、仕入税額控除がうけられないのです。

 しかし、この点については、買取業者が古物営業者の許可を受けて(古物営業法2条3項、3条1項)古物として景品を買い取る場合や、古物営業者の許可を受けていなくても金地金景品を再生資源として買い取る場合は、インボイスがなくても、自らが一定事項を記載した帳簿を保存するだけで、仕入税額控除を受けられる余地はあります(改正消費税法30条7項、同法施行令49条1項1号ハ⑴・⑷)。

 第三に、買取業者が従来から慣習的に行ってきた経理処理方法が認められなくなるという点です。

 これは、三店方式の本質にもかかわる問題です。

 従来,買取業者の売上高の計上には、大別して以下の経理処理が行われて来ました。

① 卸業者(或いは集荷業者)への転売額を売上高とし、遊技客からの景品の買取額を仕入高としてその差益を売上総利益(粗利)とする処理方法(差益制・買取手数料制)

② 卸業者への転売額と遊技客からの買取額を相殺(差引)した差額を売上高とする処理方法

③ 卸業者からの買取手数料のみを売上高とする処理方法

 説明するまでもなく、②の方法は景品が換金のツールとなっていることを自認するものであり、③の方法は卸業者を通じたホール業者からの買取資金への提供を前提とするものであり、いずれも三店方式の形式をとりつつも、実質は買取業者をダミーとした景品の自家(直)買い又は買い取らせに該当することを自ら認めるに等しい経理処理です(風適法23条1項2号、東京都の同法施行条例7条2項2号等)。

 この点について、インボイス制度導入以降、買取御者の経理処理方法としては、仕入税額が明らかになる方法、すなわち、卸業者等への転売額を売上高とし、遊技客からの買取額を仕入高とする方法(前述の①の方法)以外認められない、ということになります。

 以上、インボイス制度導入により、買取業者については、零細な業者が淘汰されること、仕入税額控除が認められない可能性があり、認められるとしても会計処理について、景品の転売額と買取額の差額を売上高として計上する方法(前述の②の方法)や、卸業者から提供される手数料だけを売上高として計上する方法(前述の③の方法)により、売上高及び納税すべき消費税額を圧縮する便法が許されなくなり、多大な消費税額の納税をしなければならなくなります。

 このことは、買取業者は、厳格な三店方式~卸業者への景品の転売額を売上高、遊技客からの景品の買取額を仕入高とし、その差益で運営されるという差益制(買取手数料制)~に完全に移行せざるを得ない、ということも意味します。

投稿者: 三堀法律事務所

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